第4回大正ロマンのカフェ・その2(人に会う)

投稿日: 2009年06月10日(水)03:19
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204-2 「小学生の頃、私はこの建物で習字を習っていたんですよ。まさか自分がここでカフェをやるなんて思ってもいませんでした」


吉増恵里さんは落ち着いた口調で話し、ニッコリと笑った。

彼女は、前出の老舗「田楽座わかや」の娘として伊賀に生まれ育った。

中学卒業後、アイルランドに留学。
高校、大学・・・日本人がほとんどいない環境で過ごした。

「なぜ海外へいったのか、自分でもはっきりした理由はないんですよ。ただこのまま家にいて、高校にいって・・・という生活がイメージできなかったんです」

–親は反対しなかった?

「全然(笑)!
逆に日本にいるとロクなことにならんような気がするから、さっさと海外へいけ、と(笑)」

–なぜアイルランドに?

「在住日本人が少ないと聞いたから。外国で暮らしても日本人とばかり一緒にいたら意味がないし、そばにいたらついつい甘えるだろうし・・・」

それから10年、彼女は青春時代のほとんどをアイルランドで「Eri」として生きた。

恵里さんは人の目をしっかり見て話す。
若さに恥ずかしさや気負いがない。

彼女はすでに精神的外国人だ(笑)。

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wakaya

父なんです。そしてアイルランドにいる私に電話をかけてきて、やらへんかと誘われた(笑)」

–悩みました?

「ええ。アイルランドで10年、一番楽しい青春時代を過ごしちゃいましたから、友だちもみんな向こうだし・・・。
でもやっぱり伊賀はふるさとですし、地元は地元で好きですし、あとやはり家族といると安心できますしね・・・。
それで、思い切って決意しました」

–オープンから半年と少しですが、やってみてどうですか?

「思っていた以上に大変です。もっともっと頑張らないといけないな、と思ってます。
父や母にもずいぶん協力してもらっていますが、私自身がもっとがんばらないと!」

–メニュづくりとかもご自身で?

「はい、もちろん! 料理担当と試行錯誤でやってます。それに、ケーキなどのデザートは毎日私がつくっています」

–目標とか夢はあります?

「当面はこのお店を軌道にのせることですね。
今はそれに集中しないと。でもお店に関連することでがんばっていることはあります。
ソムリエの勉強をしたり、とか。
味がしっかりとわからないと、自信を持って料理をすすめられませんから(笑)」


気負いなく、前へ進む・・・。
彼女の人生の歩み方、店の作り方はまさにそんな感じだ。

「わかや」の娘であることを隠すわけでもなく、振りかざすわけでもなく、ただただ自然に、いいものを取り入れて、彼女なりの形にしていく・・・。

うーん、まいりました、と言いたくなる女性であった。

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1階、2階はカフェ。
3階はギャラリーになっている。

「まだなかなか知られていなくて、個展とかあまりやってないんですけど・・・」

窓から外をみると素晴らしい眺望。
伊賀上野城が真正面に見える。

「これはこれで十分鑑賞に耐える作品ですなぁ・・・」
フォトグラファー加納と共に、やたらオッサン臭い感想を述べ合ったのであった(笑)

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